バラの美術館 ROSEUM ロージアム

バラと私

吉谷桂子

―吉谷さんにとって「ガーデン」における バラの位置づけはどのようなものでしょうか。

「欠かせない存在ですね。イギリスの庭という意を含んだイングリッシュ・ガーデンという観点からみても、バラの咲いていないイングリッシュ・ガーデンというのは、主役のプリマドンナのいないオペラのようだと言われているほどに、バラがあるのか、ないのかで庭のエネルギーや迫力・力強さが大きく変わってしまうように思います。」と、吉谷さん。

「ただ、同時にそのような強い力を持った存在というのは維持するのに手間もかかりますし、ほったらかしにしていて育つものではないのでメンテナンスも必要です。しかし、本来その手間をいとわないというのがガーデン造りの楽しみの1つであり魅力なのだとも思います。」 そのように語る吉谷さんだが、ご自身もその手間を充分にとれない時期があった事を話して下さいました。

「私自身20代〜30代にかけて、とにかく仕事の毎日で、家に帰ったらお風呂に入って寝るだけというような生活が続いていたのです。30代を越えたタイミングで、当時の自分の生活の中に、例えばゆっくりご飯を作ったり、花を育てたりするような<暮らしの豊かさ>がないことに気づき、このままでいいのか。そんな事を考えた時期がありました。」そのような気づきから、<暮らしの豊かさ>のヒントが沢山詰まっているイギリスに7年間の滞在経験もあるそうですが、「例えば掃除ひとつにとっても、絵を書くように掃除をする…等、イギリスの生活で感じた人生の豊かさも数多くあり、今のガーデン造りにも活かされています。」と、語る吉谷さん。

「人にも様々なシーズンがあると思うのです。誰の人生を見ても仕事や子育て等、だれでも忙しいシーズンがありますよね。けれど一生そういった忙しい時期が続くものでもないと思います。ガーデン造りや、バラを育てることを望むひとには、どんな人にもそのような豊かな時間が与えられると思っています。」そして、「実際私は今、子育てをしながら仕事をしていることもあり、今はどちらかというと丁度忙しいシーズンなのです。だからこそあと数年たった時に、もっと手間をかけられる時期がきたらいいなと、心から望んでいます。」

 

吉谷桂子氏
吉谷桂子氏

―ナポレオン皇妃ジョゼフィーヌが過ごしたマルメゾン城の庭を表現する際に、 意識されたポイントを教えて下さい。

「今回は、バラの皇妃と呼ばれたジョゼフィーヌが過ごしたお庭を表現ということだったのですが、ジョセフィーヌの庭はただ、バラだけかといえばそういうわけでもなく世界中から植物を集めて、大きな温室を作っていたのです。そこで育てていた、沢山の植物を使った空間づくりをされていたと思うので、そこを表現できるように意識をしました。」また、「マルメゾン城のインテリアも、それを選ぶ素敵なセンスも、色々な要素が詰まって、あのお庭の世界観が造りあげたと思うのですが、花だけでなくジョセフィーヌが愛したもの達を表現することを意識しました。」

「一輪のバラをいかに引き立てる、お庭造りが出来るかというのは私のテーマです。」と語る吉谷さんだが、その答えの結論として、「丸い形の植物に対して、線の形の植物を上手に配置してあげることで、綺麗に引き立つようになると思うのです。」と語って下さいました。

 

―好きな(或いは、思い出のある) バラと、香りがあればお教え下さい。

「どれから話したらいいかしら、好きなバラが沢山あります。」と、満面の笑みを浮かべてお話しして下さった吉谷さん。初めてバラを育てたのは1993年という吉谷さんには、20年を超えるバラの歴史があるようです。

「一番最新ですと、イブピアジェ、河合 伸志さんに捧げていただき、私が命名した、ベルベティ・トワイライト、ムタビリスという一重の薔薇も大好きです。小山内健さんに選んでいただいたイングリッシュローズの、ザ・ジェネラス・ガーデナーの色合いも大好きです…!」とこのほかにも次々にバラの名前が挙がる吉谷さん。「一季咲きのバラも好きですが、やっぱり四季咲きのバラが私は好きです。今お仕事で携わっている星の王子さまミュージアムでも、初夏から初冬まで、楽しめるバラをいれる等の工夫をしています。」

ナチュラルな笑顔に、終始自然体にお話し下さる吉谷さんとお話しさせて頂いていると、ガーデン&プロダクトデザイナーという肩書を越えて、暮らしのプロであり、まさに現代の女性がお手本にしたい、女性としての豊かな生き方が詰まっていることを感じる人は多いのでは。きっとこれからも、吉谷さんの手がけるガーデンを通して、多くの人に温かい豊かさが届くのでしょう。

 

プロフィール

吉谷桂子(よしやけいこ)

約7年間の英国暮らしを経て帰国。

現在、ガーデンデザイナーとして活躍するほか、クラフトや暮らしを楽しむさまざまなアイデアを雑誌やテレビなどで発信

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