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ギリシャの女神クープ・デベとヘーベスリップ

クープ・デベ

「クープ・デベ」はブルボン系でピンク色、花弁数が多く、カップ咲きになるオールドローズらしい花形のバラです。「ヘーベスリップ」はハイブリッドエグランテリア(HEg)という分類に仕分けされているもので、その起源を原種のロサ・エグランテリアにおくものです。花色は白、花弁の縁にほんのり紅がかかり、花弁数は 20枚くらいの半八重咲きでさわやかな印象を与えるバラです。
この二つのバラの共通点はなんでしょうか。

どちらもひとりのギリシア神話の女神の名前なのです。その名は「ヘーベ」。
ヘーベは青春の女神で、神々の饗宴のときには給仕の役割をしたということです。

「クープ・デベ」を原綴で書くと‘Coupe d’Hebe’、Hebeはヘーベのことで、 Coupeは英語のカップです。つまり、クープ・デベとは「ヘーベのカップ」ということになります。「給仕係のヘーベが持っているカップ」といった意味合いになるでしょうか。なるほど「クープ・デベ」の花形はカップ咲きで青春そのものといったはなやかなピンク色をしています。

ヘーベスリップ

もうひとつの「ヘーベスリップ」‘Hebe’s Lip’、これはいうまでもなく「ヘーベの唇」です。こちらは花弁数の少ない半八重咲きですが、透明感のある白の花色とあいまって清純な乙女を想像させるようなさわやかな花容です。そして花びらの縁がほんのり紅に染まった様は若き女性の唇を思い起こすのに余りあります。

気に入った女性をさがすのに余念がないゼウス、嫉妬深い妻のヘレ、アポロンを恋するあまり花に変身してずっとアポロン(太陽)を眺めていたヘリオトロープ、アポロンに追いかけられるのを嫌がってゲッケイジュに変身したダフネ、わが身に恋こがれたナルシス、若い男の子ヒュアキントスを愛するアフロディーテ、ギリシア神話は人間くさい神さまばかり、そして日本の八百万(やおよろず)の神様と同じように大勢存在する神々、ギリシアの神々は人間くさくてどこか親しみがもてます。

コラム寄稿

野村和子(のむら かずこ・バラ文化研究所理事)
京成バラ園芸(株)研究所にて故鈴木省三氏の助手を長年にわたり務め、その後NPOばら文化研究所の立ち上げに携わり理事を就任。同時に千葉市花の美術館の相談員を務める。
著書「オールドローズ花図譜」(小学館)、「オールドローズ」(NHK出版)、「四季の花だより」(千葉市みどりの協会)他。

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