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アラン・メイアン

第13回国際バラとガーデニングショウ(2011年5月11日~16日/西武ドーム)が開催され、16日には、ローズテラスにて、「伝統から生まれる香りのバラ」と題した、育種家アラン・メイアン氏の講演がありました。講演内容と、講演後の氏に直接インタビューをしたお話をまとめてご紹介します。
バラは平和の象徴。今、日本に呼んでいただいたことに感謝したい
―世界的に有名なバラ種苗名門会社5代目のアラン・メイアン氏。まずは、メイアン社のバラをメインに彩られた「香りのローズアベニュー」の感想を。
ローズアベニュー

まるで南フランスのプロヴァンス地方に立っているような印象を受けましたね。たくさんの日本人の方がプロヴァンスを訪れてくれているように錯覚して、「あ、ここは日本だった!」と気が付く、そんな感じです。まさにプロヴァンスの風景がそのままここにやってきたようでした。
昨日、ローズアベニューのバラのトンネルをくぐり、たくさんのメイアンのバラに触れ、いろいろなことを考えました。日本は今、大きな地震や津波によって、とても厳しく大変な状況にありながら、短期間にこれだけ素晴らしいショウを開催し、そこに私を呼んでくださったことに深く感謝します。バラは平和の象徴であり、私たちの心の支えであることを改めて感じました。

―メイアン社には世界的に有名な「ピース」という名前のバラがあります。直径約15 センチ、淡い黄色にピンクがほんのりと混じった大きなバラです。

「ピース」は、1935年、フランスのリヨンという都市で、フランシス・メイアンによって作出されました。リヨンはモダンローズの発祥の地でもあります。このバラを世界に広めたいと願ったのですが、当時は第2 次世界大戦の真っただ中。当然アメリカとも、ドイツやイタリアとも交流が途絶えていました。しかし、なんとか1942年にアメリカに送られ、そして、ドイツやイタリアにも送られるようになりました。戦争中というのは、戦場で戦う人にとっても、国で帰りを待つ人々にとっても、誰にとっても、とてもつらい時期です。バラを見ることで、人々の心はどれだけ救われたことでしょう。そういう歴史的な背景から、このバラはアメリカで「ピース」と名付けられました。1945年の戦争終結の時に、国連のテーブルの上に飾られたのはこの「ピース」でした。

メイアン家のバラは、フランスの歴史のエスプリと共に
―メイアン家は、作出家ファミリーと言われ、何代にも渡り素晴らしいバラを作出しています。

メイアン家がバラの作出と栽培を始めたのは19世紀と古く、私で5代目になりますが、現在のメイアン社の母体を築いたのは、3代目である私の祖父であるアントワーヌ・メイアンです。私が作出した「パパ・メイアン」は祖父の愛称。祖父に対する尊敬の念と感謝の気持ちを込めて名付けました。その息子が、私の父、フランシス・メイアンです。私の父は早くに亡くなりましたが、幸いにも祖父が健在だったために、バラ作りについていろいろと継承することができました。私の母もバラ作りに関わりました。
私のファミリーは、強い絆で結ばれ、常に支えあってきました。私は特別な勉強をしたというわけではなく、小さな頃から自然にバラの中で育ち、バラの文化に触れてきました。

―メイアン社の歴史は3世紀に渡り、フランスの歴史と深く関わってきました。メイアンのバラには、フランスの伝統とエスプリが凝縮されているようです。

1982年作出の「プリンセス・ドゥ・モナコ」は、モナコの王妃、グレース・ケリーに贈られたバラです。モナコ王室とメイアン家は繋がりが深く、母がグレース・ケリーと一緒にこのバラを選び、名づけました。
ピエール・ドゥ・ロンサール」は16世紀のフランスのとても有名な詩人の名前です。女性の美を追求するような美しい詩をたくさん残しています。バラの美しさや優しさを女性に重ね合わせた詩も書いています。女性とバラを深く愛していたんでしょうね、かといって、プレイボーイというわけではなかったようですが(笑)。
ザ・マッカートニー・ローズ」は、ご存知のように、元ビートルズのメンバー、ポール・マッカートニーに捧げられたことに由来するバラです。あの方も非常にバラが好きな方です。このバラはとても香りがよく、バラの国際コンクールで、24もの芳香賞を受賞しています。

香りもその系統が重要。新しいものはバナナなどフルーツの香りも
―メイアン社のバラは、その香りの高さでも有名です。

香りには特に力を入れてきました。「パパ・メイアン」もその香りで知られています。香りのバラを作出する上で大切なのは、交配するバラそのものの香りだけでなく、その前の世代の香りがどうなのか、世代をどんどんさかのぼって追及していくということです。それでも思い通りの香りができるかどうかはわからない。どんな香りがあるか調べ、系統はどうか研究し、どんな香りになるのか想像して……と、とてもデリケートな仕事です。

―最近は新しいタイプの香りのバラも作出しています。

2010年発表のバラをいくつか紹介しましょう。 「ボレロ」は、今までとは違う新しいタイプの香りのバラです。バナナの香り、スパイシーな香りも加わった、トロピカルフルーツのような香りです。 「ピエール・カルダン」は、一つの花弁にいろんな色がちりばめられたような花弁が特徴。香りも独特で、姿と香りの調和を楽しんでください。「ライラック・ビューティ」は淡い紫色で、こくのある甘いバイオレットの香りがします。

みなさんの幸せのために、これからもバラを作り続けたい

―バナナやスパイシーな香りは新しい印象があります。これからどんな香りを作っていくのでしょうか。

ピーチドリフト

バラの中に、もともとバナナやマンゴーの香りがあったのではなく、新しい品種が生まれる過程で、今までになかった香りが生まれてくるのです。
いろいろな香りが出てきた中から、選び出し、残していきます。流行を作ったり、流行を追ったりするのではなく、自然の中から生み出される、今までにない香りを大切にしていきたいですね。
現代はコンピュータなどのハイテク技術が進んでいて、人間のもつ感覚が忘れられがちですが、香りもそうですが、人の五感に働きかけるようなバラを作っていきたいですね。

―これからはどんなバラを? 今一番作りたいバラは?

いろんなイメージがあるので、一言では言い表せません。毎日毎日新しい刺激を受けて、私の中のイメージも日々変わっていきます。今日はここにいますが、この後は長崎のハウステンボスに向かいます。そこでもまた新しい刺激を受けるでしょう。
バラを育ててくれる皆さまが、バラがすぐ横にあることで幸せを感じてもらえるような、バラと一緒に生活する心地よさを感じてもらえるようなバラを作りたいという気持ちを常に持っています。皆さまの幸せのために、皆さまに愛されるバラをこれからも作出していきたいです。

―最後に、一言。ロージアムのご感想もお聞かせ下さい。
ベル・ロマンティカと
アラン・メイアン氏

まだ日本では昨年ではじめたばかりですが、コンパクトでたくさんの花が咲く「ドリフト」というシリーズがあります。アメリカではすでに7品種が出ています。鉢植えにもハンギングバスケットにも利用できるタイプで、小さな庭でもマンションのベランダでも簡単に育てられるので、是非おすすめしたいですね。
バラは、品種によって、国ごとに違う名前がつけられているものがあります。たとえば、外国で見つけたバラを、日本で名前が違っても探すことができるように、こういったサイトが利用できるとよいと思います。ロージアムにも、バラに関する様々な情報を提供していきたいです。

バラは、いつでも皆さまの身近にあります。バラを育てることを、生活の中で気軽に楽しんで下さい。バラは幸せをもたらす、平和のシンボルです。

プロフィール

アラン・メイアン

「メイアン・インターナショナル社」の現社長で、創業者から5代目にあたる。事業経営者として素晴らしいリーダーシップを発揮する一方、世界連合バラ協会の殿堂入りを果たしたハイブリッドティーローズ「パパ・メイアン」はじめ、毎年多くの品種を作出し、数々の受賞歴を持つバラの大家としても有名。

メイアン・インターナショナル社

http://www.meilland.com
南仏プロヴァンスの世界的なバラ種苗会社。育種の歴史は100年以上に渡り、世界中のバラ品種コンテストで多くの受賞歴を持っている名門。日本でも絶大な人気を誇る「ピエール・ドゥ・ロンサール」や、世界から永遠の銘花と呼ばれる「ピース」ほか、「パパ・メイアン」「プリンセス・ドゥ・モナコ」、ドリフトシリーズなど多彩な品種を作出し、世界的に展開している。
メイアン・インターナショナル社の日本における総代理業は京成バラ園芸様が行っております。
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