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聖職者の着衣の赤紫色のカーディナル・ドゥ・リシュリュー

カーディナル・ドゥ・リシュリュー

カーディナルは枢機卿、枢機卿とはローマ教皇を頂点として、それに次ぐ高位の聖職者の役職名です。が、歴史を振り返ると聖職だけでなく国の為政においても政治を左右する人物も多かったようです。このリシュリュー卿もそうですし、英国ではヘンリー8世の腹心であり、ハンプトンコートを建てたウルジーも枢機卿でした。ウルジーは後に失脚し、ハンプトンコートもヘンリー8世のものになりましたが。
リシュリューが活躍したのは、フランスでブルボン朝が台頭しはじめたルイ13世の時代です。ルイ13世とその宰相を務めたリシュリューによりブルボン朝は確立し、輝かしい次のルイ14世の時代の基盤を作ったといえるでしょう。
とはいってもリシュリューが生きたのは1585年から1642年、キリスト教のプロテスタントの運動が起き、フランス国内でも宗教戦争が盛んで、またハプスブルグ家の勢力にも対抗しなければならないという大変な時代でした。また、幼少であったルイ13世の摂政を務めた母后と実権を握ってからのルイ13世のとの対立などの内紛もあり、そうした様々な事柄にリシュリューは実力を発揮し、ルイ13世を補佐した人物といえるでしょう。
それではなぜ、このバラにこの名前がついたのでしょうか。
バラのカーディナル・ドゥ・リシュリューはガリカ系のバラで、花色は赤みのある紫、この花色の故にカーディナル・ドゥ・リシュリューと命名されたのでしょう。
カーディナルというと赤を表す言葉でもあり、真っ赤の印象がありますが、本来の色としてのカーディナルは赤みがかった紫であるようです。まさにこのバラの色なのです。
聖職者が着る服の色は赤、紫、白、緑のどれかと決まっていて、肖像画でみるリシュリューは赤か赤紫を着ています。
そんなことからの命名であろうと想像されます。
花色はやや赤みのある紫、花はガリカ系としては小ぶりで径6~7センチ、花弁が細かく、ポンポン咲きに近い感じの花形です。
樹形も他のガリカ系がコンパクトであるのと違って枝が伸びて半つる状になります。開花期は5月の中旬から末の一季咲きですが、オールドローズとしては珍しい紫色系の花で、現在も多くの愛好家に支持されています。
1847年以前に作出されたものと考えられている古いバラです。

コラム寄稿

野村和子(のむら かずこ・バラ文化研究所理事)
京成バラ園芸(株)研究所にて故鈴木省三氏の助手を長年にわたり務め、その後NPOばら文化研究所の立ち上げに携わり理事を就任。同時に千葉市花の美術館の相談員を務める。
著書「オールドローズ花図譜」(小学館)、「オールドローズ」(NHK出版)、「四季の花だより」(千葉市みどりの協会)他。

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