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上野砂由紀

―英国風庭園とは一線を画している、「北海道ガーデン」とは、どのような庭園なのでしょうか。また、「北海道ガーデン」とバラの位置づけはどのようなものでしょうか。

「“北海道の気候に合わせて、植物が育つこと”それこそが、北海道ガーデンそのものだと思うのです。」そのようにお話ししてくださった上野さんは、今まで土地の特性を活かしたガーデン造りに挑戦してきた。そして、北海道ガーデンでのバラはとても重要な位置づけであると語ってくれた。7月上旬に一斉に花が咲くという北海道のバラは、つるバラなのに背が低かったり、寒暖の差が大きいからこそ花の色が鮮やかに見えたり、はなびらが多いものもあり、ハマナス系の薔薇が良く育つなど、北海道ならではのバラの表情を愉しむことが出来る。また寒い北国の積雪は約1m程度、雪の中はあったかいが、雪から植物の頭が出てしまうと-20度、-30度にも及ぶ。まさに“バナナに釘が打てる世界”である真冬の一方、夏は+30度まで上がる寒暖差の中、どのようにバラを育てていくかが課題だという。放っておけば育つものではなくて、ひと手間かけないと上手に育たないからこそ、咲かせた時の喜びはひとしおであるという。そんな喜びに魅了されることもあり、北国のバラファンは多いのだろうか。

―北海道ガーデンを作ったきっかけをお聞かせください。
上野砂由紀氏

「はじめは、両親の営む農場で田んぼのあぜ道にお花を植えたのがきっかけだったのです。」農家も個人でお米が販売できる制度が出来て、直接農場にお米を買いに来てくれるお客様が増えてきたことで、お客様に少しでも楽しんでもらえるように、農道の脇にハーブなどを植えて景観づくりを始めたのが原点だそうだ。そして最近では有名になってきた「グリーンツーリズム」を当時一足早く取り入れ、都市と農村の交流点を造る挑戦を始めた。さらに農場の散策も楽しめるよう、当初畑だったところに、石畳の小道を造り、花を植えた所は現在の「マザーズガーデン」となっているそうだ。

―好きな(或いは、思い出のある)バラと、香りがあればお教え下さい。

「香りは、ムスク系の柔らかい香りやフルーティーな香りが好きです。」上野さんは、あまり濃い香りよりも、風が吹いた際に香ってくるような優しい香りを好んでいるようだ。まさに“風でふわりと香ってくる”穏やかなバラの香りに魅力があると語ってくれた。ジャクリーヌ デュ プレのような花びらの少ない薔薇も好きだそうだ。「バラのプロではないのです。」少し謙遜されながら、はにかむ上野さん。きっとこれからも上野さんらしい優しい世界観で、人々を魅了するガーデンをデザインしてくれるのだろう。

プロフィール

上野 砂由紀 (うえの さゆき)

上野ファームガーデナー
北海道旭川市生まれ。イギリスでのガーデン研修を経験後、上野ファームで家族とともに庭づくりに着手。2014年、ガーデン雑誌「BISES」(ビズ)誌上で行われた「ビズ・ガーデン大賞」にて大賞・グランプリを獲得。2008年秋に放映された倉本聰脚本のドラマ「風のガーデン」の舞台となる庭をデザイン・制作し話題となる。森の花園エリアの植栽デザインを手掛けた「大雪 森のガーデン」が上川町に2014年 春グランドオープン。

北海道の気候風土で育つ植物が作りだす庭を「北海道ガーデン」と考え、北国に合わせた庭づくりと魅力発信に奮闘中。

●連載中の雑誌 
BISES(芸文社)、園芸ガイド(主婦の友社) 
●著書
「上野さんの庭しごと」(エフジー武蔵)
「北の大地の夢見るガーデン」(集英社)
「上野砂由紀のガーデン花図鑑」(芸文社)など

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