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野村和子

ROSEUMの監修をしていただいているバラ文化研究所理事である野村和子先生へお話を伺いました。

― 好きなバラとその理由を教えて下さい。

本心を云うと花びらがあまり多くなくゆったりと咲くもの、そしてソフトな色合いのバラが好きです。たとえば「ペネロペ」「アデレード ドルレアン」「サリーホームス」のような・・・
またひそやかに咲く野生種の美しさにも心ひかれます。
でもすべてのバラに目を向けるようにしていますのでどれが好き、とは決めないことにしています。

― 野村先生にとってのバラとは?

尽きない追求対象です。バラほど幅広く、奥が深いものはありません。
すべての園芸植物は原種から発展しています。バラの場合は原種から現代バラをつなぐ間に長いオールドローズと分類された期間が存在し、それが大事なバラの系統のひとつとなっています。ほかの園芸植物をみても原種と現代のものをつないでいるカテゴリーがあるものは見当たりません。
そしてそのバラの歴史をたどると必ず人間の歴史と深い係わりがある、それを探求していく面白さは尽きないものがあると思います。
でも本音を言うといつも同じ話はできない、常に新しいことを見つけて皆様にお伝えしていかなければならない、という強迫観念が伴っていることもまた事実です。

― 鈴木省三氏から影響を受けた中で最も記憶に残っているエピソードを教えて下さい。
野村和子氏

鈴木氏はひとつのことを調べるのにもありとあらゆる人脈を利用していました。
期限がある原稿を引き受けても一箇所ひっかかるとそれを国内だけでなく海外までも問い合わせていました。当時ですからすべて手紙で、返事がくるまでは何週間もかかります。それでもその返事がくるまではたとえ期限が過ぎていようと決して筆を進めようとはしませんでした。
今は情報網が発達しているので比較的楽ですが、徹底的に調べるという姿勢には大きく影響されました。
同様のエピソードですが、「ばら花図譜」という本を出版するまでに随分年月を要しましたが、バラの解説を書くためにそのバラの前にいって花がどうの、葉はどんな、刺の形は、樹形は、などすべて観察しながらの口述でした。記憶でいくらでも書ける人だったと思うのですが、その真摯な姿勢には学ぶべきところがありました。

― 今後のバラの世界やロージアムに望むことは何ですか?

大それた言い方かもしれませんが、それぞれが独自性を持って新しいバラを追求していただければ、と願っています。
長岡の越後丘陵公園で香りのバラ新品種コンテストの審査員をしていますが、昨年あたりまではハイブリッドティーはもちろん、フロリバンダであろうとミニアチュアであろうとすべてが丸く、渦巻き形の花が出品されていました。今年は剣弁高芯タイプの花もありましたが、流行を追うばかりでなく、バラエティのある花形も追求していただきたく、それでいてあまり「バラ」を逸脱しないもの、という贅沢な要望を持っています。時代に合わせて薬剤をかけなくてすむもの、耐暑性のバラの開発もぜひとも進めてほしいですね。
ロージアムさんに対しては、そうした事柄を大きく抱合して先導していただけると有難いです。

プロフィール

野村和子(のむら かずこ・バラ文化研究所理事)

京成バラ園芸(株)研究所にて故鈴木省三氏の助手を長年にわたり務め、その後NPOばら文化研究所の立ち上げに携わり理事を就任。同時に千葉市花の美術館の相談員を務める。
著書「オールドローズ花図譜」(小学館)、「オールドローズ」(NHK出版)、「四季の花だより」(千葉市みどりの協会)他。

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