前々回にルイ13世の宰相カーディナル・リシュリューの名がついたバラをご紹介しました。これから何回かブルボン王朝に係わる名前のバラをご紹介しましょう。
ルイ13世の後を継ぐのはルイ14世、その名前のバラがあります。深い深い紅色のバラです、黒バラと表現した方がいいかもしれません。
ルイ14世は17世紀から18世紀にかけてフランスに君臨し、ブルボン朝の絶頂期をもたらした王です。そのためでしょうか、「太陽王」とも呼ばれます。
またルイ14世は「朕は国家なり」と言ったことでも知られています。かのベルサイユ宮殿もルイ13世が狩猟用に建てたものを、ルイ14世が宮殿に築き上げたものです。その華麗な宮殿はその後各国の宮殿に模倣されました。が、ベルサイユの建設にお金をかけすぎ、晩年は大変だったようです。
その後王朝はルイ15世から16世に引き継がれ、ルイ16世の王妃がかの名高いマリーアントワネットだったのです。フランス革命によりブルボン朝はルイ16世の代で終わりますが、その華やかさを彷彿させるベルサイユ宮殿は今も当時を忍ばせて公開されています。
ところで、このルイ14世の名のバラ、太陽王と言われるには少し落ち着いた感があります。花色は深い色合い、花弁数もほどほど、花首は少しうなだれ気味、どちらかというと、華やかさよりはシックなイメージが強い花です。ベルサイユ宮殿の主にはもっと派手な色合いと花容の花の方が似合うのでは?と思うこともあるのですが、命名者はルイ14世にどんな思いを寄せてこのバラに名前をつけたのでしょうか。
イギリスのハドスペンガーデンを訪れたとき、オーナーのホープ氏が、私に一輪のルイ14世の花をプレゼントしてくださいました。1年くらいはそのままドライフラワーにして大切にしていました。今はホープ氏もカナダに戻り、ハドスペンから手を引かれたようです。ルイ14世の花をみると脳裏によみがえる思い出です。
コラム寄稿
野村和子(のむら かずこ・バラ文化研究所理事)
京成バラ園芸(株)研究所にて故鈴木省三氏の助手を長年にわたり務め、その後NPOばら文化研究所の立ち上げに携わり理事を就任。同時に千葉市花の美術館の相談員を務める。
著書「オールドローズ花図譜」(小学館)、「オールドローズ」(NHK出版)、「四季の花だより」(千葉市みどりの協会)他。